東洋医学の診断方法 五臓六腑の虚・実

当院では西洋医学的な検査方法も行いますが、メインは腹診や脈診といった東洋医学に基づく検査方法を用いて診断をしています。
ですが、施術を受けている患者さんからしてみると、何を診られているのか、どんなことを考えているのかなど疑問に思うことがたくさんあるかと思います。
そこで診断を行ううえで基礎となる東洋医学の考え方、今回は「五臓六腑の虚・実」についてご紹介します。

強弱を表す「虚」・「実」とは??

五臓(肝、心、脾、肺、腎)六腑(胆嚢、小腸、胃、大腸、膀胱、心包(心臓を包む心膜))は体質や状況、習慣や遺伝などにより、そのはたらきの強弱のバランスを上手くとることで、心身の健康を保っています。逆にそれが何らかの影響(ストレスや飲食物、薬や環境など)で行きすぎてしまい、病気や体調を壊すこともあります。
ちなみに、「六腑」はそれぞれの五臓との連絡係のような意味合いがあります。

東洋医学では五臓六腑の働きの状態が
働く力が大きく、容量が多いことを「実」
働く力が少なく、容量が少ないことを「虚」
とそれぞれ表します。

肝の「実」と「虚」の状態を例にしてみます。

どちらが良いということでもなく、体質や状況、習慣や遺伝などにより決まっていて、それが変わることはほとんどありません(例外はあります)。
大事なことは他の五臓と上手く連携してバランスを保ち、健康を維持できるかということです。
そしてこのバランスが崩れた時に何らかの不調が出やすくなってしまいます。

「虚」と「実」はシーソーのような関係にあり、どちらかが「虚」すともう一方は「実」になり、どちらかが「実」するともう一方は「虚」すようになることが多いです(例外もあります)。
上記の「肝実」がアルコールを摂りすぎたり、ストレスが多くなりすぎると肝臓が更に「実」し、消化器系である脾が更に「虚」してしまい、何らかの消化器症状が出ることがあります。例えば二日酔いなどです。
この場合の身体は「肝実脾虚」という表現になりこれを東洋医学では「証」といい、西洋医学での診断名にあたります。

また、施術の順番ではまず「虚」から治療します。「虚」とは空に近い状態なので、補うという意味で「補(ほ)す」といいます。
その後に「実」を治療します。「実」とは溢れている状態なので、独特な表現になりますが溢れているものを少なくするという意味で「瀉(しゃ)す」といいます。

ではどこが「虚」していて、どこが「実」しているのかはどうチェックしているのかと思われますが、腹診の際に判断することが出来、身体のあちこちにそのサインは出ています。

  • お腹の硬さ、柔さ
    →硬ければ「実」(例えば左下腹部が硬ければ血の滞りを表すので血の「実」という意味で腹部瘀血(オケツ)といいます)
     柔ければ「虚」(臍の下がフワフワとした力のない感じ、「腎虚」に多い)
  • お腹や頭、足の温度
    →頭のてっぺんが熱いと「実」(上と同じ瘀血であり、頭にあるので頭部瘀血といいます)
    この場合、下半身に熱が行き届かなくなり、「虚」して足が冷える、
    上半身は熱で充満し、「実」して熱を帯びるというセットで現れることが多い。

    →臍周囲が冷たいと「虚」(これは「脾虚」が多く、アレルギーや消化器症状が出やすい状態)
  • 「火穴」の押した時の痛み(圧痛)
    →先ほど経絡の中に他の経絡と繋がるツボがあると紹介したように、それぞれの経絡にはその経絡の中に炎症反応があるかを表すためのツボもあります。
    そのツボを「火穴(かけつ)」といい、このツボを押した時に痛みがあれば炎症反応、つまり熱があるので、「実」と判断できます。
    例えば、肝臓が実している肝実の場合は、足の親指と人差し指の間にある「行間(こうかん)」というツボを押すと痛みがあることがよくあります。

今回も長々と不慣れな言葉を使いながらの紹介となってしまいましたが、
何となく「そんなことを診ていたのか」と思っていただければ幸いです。
今回ご紹介したのもまだまだ概論のようなものなのでまた機会があればご紹介して行けたらと思っています。
また、実際に施術を受けている時に今はどんな状態なのか、どんな施術をしているのかなど聞いていただいても構いません。
東洋医学に基づく施術は根本的な身体の改善に繋がる施術になります。
「根本的に身体を変えて、痛みや不調を何とかしたい!」
という方は是非一度当院にご相談ください。