様々な不調や痛みの原因になる内臓下垂

内臓下垂という言葉はあまり聞きなれないことかもしれませんが、色々言い換えられた言葉で耳にしていることがあるかもしれません。
例えば、ぽっこりお腹。これは脂肪が増えているだけでなく、そのほとんどが腸が垂れ下がり、お腹が出てしまうことでなってしまいます。
また、骨盤がズレている、もしくは骨盤が歪んでいるなどもこの内臓下垂によるものが多いです。
というのも、腸やその他の内臓などの重さと、それにより周りの筋肉も伸長されるので、結果としてそれらを支えている骨盤が歪んでしまうのです。
今回はなぜ内臓下垂が起きてしまうのか、どんなところに反応が出るのか、どんなセルフケアがあるのかなどをご紹介していきます。

内臓下垂はなぜ起こる?

内臓下垂は言葉の通り、内臓が落ちることです。
その原因として多いのが
腹筋の弱体化です。
ここでの腹筋とは一般的な腹筋を意味する腹直筋だけでなく、その横にある腹斜筋も含みます。

ではなぜ、腹筋が落ちてしまうのか?

実は上記で述べたような腹直筋や腹斜筋を鍛えるだけでは内臓下垂の根本的な解決になることは少なく、なぜなら、腹筋の弱体化を起こしている隠れた原因を解決していないからです。
これは西洋医学では説明しにくのですが、東洋医学では身体のはたらきからその原因を読み解くことができます。
その隠れた原因とは

  • 「脾(ひ)」の機能低下
  • 「腎(じん)」の機能低下

があげられます。
突然聞きなれない言葉だと思うので、順番に解説していきます。

「脾(ひ)」というのは消化器系全般を意味しています。
そしてこの「脾(ひ)」のはたらきの中に「昇清(しょうせい)作用」という五臓(現代医学では肝臓、心臓、消化器、肺、腎臓)を引き上げる作用があります。
この作用により、内臓を正しい位置に保ち、正しく機能させる上で需要なはたらきとなります。
ですが、この「脾(ひ)」のはたらきが鈍くなると、「昇清作用」もはたらかなくなるので、内臓は正しい位置を保つことができなくなり、重力に負けて内臓下垂となってしまいます。
そして「脾(ひ)」を弱らせてしまう原因はいろいろあるのですが、多いのが「糖の過剰摂取」によるものです。
東洋医学では「五味」といって、肝は酸味(すっぱい)、心は苦味、脾は甘味、肺は辛味、腎は鹹味(塩辛い)と表し、その味覚を取りすぎると、その臓のはたらきを鈍くさせるとされています。
このようにはたらきが鈍くなった状態を「虚(きょ)」といい、「脾」が「虚」したので「脾虚(ひきょ)」といいます。
この「脾虚(ひきょ)」により、昇清作用がなくなった状態になるので内臓下垂になってしまいます。
こちらの記事にも「糖が身体に与える影響」をご紹介しておりますのでご覧ください↓


次に「腎」についてです。
こちらは腎に関わるツボが丁度、腹斜筋にあることが原因となります。
そのツボを「帯脈(たいみゃく)」といい、脾が五臓を持ち上げていたのに対し、腰やお腹を通る経絡を束ねて、経絡の流れや配列を保っています。
よく腰を痛めるとコルセットをしますよね、帯脈は人間に備えられたコルセットのようなものとイメージするとわかりやすいかもしれません。
腎のはたらきが鈍くなる(腎が虚すので「腎虚」といいます)と、この帯脈が緩み、経絡の配列が乱れ、内臓下垂となってしまいます。
腎を弱らせてしまう原因も様々ですが、ストレスや疲労などによるものが多いです。

内臓下垂の反応点

以下が内臓下垂の反応点です。

  • ソケイ部(足の付け根)の硬さ(酷いと圧痛が出ることもあります)
    →落ちてきた内臓を最後に支えるのがソケイ部になります。
    内臓下垂の期間が長ければ、硬さだけでなく押した時に痛みも出てきます。
  • 下腹部の力がなくなる
    →腹筋が弱くなっているので、押すとフワフワとした力感のない硬さになります。
  • 臍周囲の硬さ・冷え
    →この辺りは「腎」の反応のエリアになるため、糖代謝による、もしくはストレスや疲労による「腎虚」の反応です。
  • 脇腹(腹斜筋)の硬さ(くすぐったいこともあります)
    →「腎虚」による反応です。また「脾虚」でも筋肉が過敏になり、くすぐったさが出ることもあります。
  • 肋骨下の硬さ
    →相対的に臓器が落ちると、右肋骨は肝臓に、左肋骨は膵臓に引っ張られて反応が出ます。
  • 腰椎2〜5番(腰全体)の硬さ(筋肉が盛り上がるほど硬いこともあります)
    →腰椎2〜3番が腎、腰椎4〜5番が脾に関連しているとされています。

内臓下垂が原因となり引き起こされる関連症状

上記で紹介した以外にも内臓下垂によって引き起こされる関連症状は

  • 膝の痛み
    →内臓下垂によって骨盤が前傾し、前ももやすねの筋肉にかかる負担が大きくなります。
    また膝が外を向きやすくなることで膝の痛みを引き起こします。
  • 首・肩の痛み
    →帯脈が作用しなくなると、肩甲骨が内すぼめ(巻き肩)になり、頭が落ち、首や肩の負担が大きくなります。
    また、肩の場合、肩甲骨の位置が下がるので肩関節の動きが鈍くなり、五十肩の原因にもなります。
  • 消化器系の症状
    →内臓は正しい位置にあることで、そのはたらきができますが、内臓下垂でははたらきが鈍くなってしまいます。
    この状態では内臓の代謝が悪くなるので、消化器全体の動きが鈍くなり、腹痛や便秘・下痢、食欲不振や消化不良の原因となります。
  • 下半身の冷え
    →物理的にソケイ部を押し潰すような力が加わるため、下半身への血流が悪くなります。
  • 姿勢不良
    →内臓下垂により、骨盤が前傾、巻き肩、頭が落ちるということが続くと筋力が低下し、猫背などの姿勢不良の原因にもなります。

自宅でできる内臓下垂克服トレーニング

身体の不調につながりやすい内臓下垂ですが、実は意外とセルフケアの仕方は時間や場所を選ばず、簡単にできます。
今回は手軽にできる2つの方法をご紹介します。

ドローイン

腹筋に力を入れ、姿勢をよくします。
立っている、座っているだけの時でもできる簡単トレーニングです。
まずはどのタイミングで行うか(例えば電車での通勤中や車の運転中、買い物をしながら店内を歩いている時やキッチンに立っている時など)を決めておくと習慣化しやすいかもしれません。

内転筋アイソメトリック(等尺性運動)トレーニング

こちらは座っている時(立っている時もペットボトルなどを使うとできます)に、内ももを強化するトレーニングです。
トレーニングといっても、関節を動かさずに筋肉を収縮(等尺性運動=アイソメトリック)させるので、膝が痛い方にも安心して行えます。
下の図ではボールを使っていますが、タオルを畳んだものや、クッションなどでも代用できます。

内臓下垂による諸症状でお困りの際はまず当院にご相談ください

内臓下垂は年齢と共に発症率が高くなり、いろいろな症状の引き金となってしまう可能性があります。
また、若年層でも原因となるようなことを積み重ねていくと、より早く発症してしまうこともよくあります。
そのため、内臓下垂になっていても、そうでなくても、先ほど紹介した反応点に痛さや硬さなどの反応がある場合、早めのケアを行うことをお勧めします。
上記でご紹介したトレーニングを行うことはもちろん、施術も受けることで、内臓下垂克服の効果は大きくなります。
骨盤矯正を受けても症状が変わらなかったり、すぐ元に戻ってしまう、根本的な解決策を見つけたいという方は是非一度当院にご相談ください。