前回紹介した血流の悪さを表す瘀血。
その瘀血が原因で起こる疾患を今回はご紹介していきます。
(前回の記事はこちらです↓)
めまい・頭痛・不眠
これらに共通しているのは頭のてっぺんにできる「頭部瘀血」です。
この頭部瘀血は頭のてっぺん(百会というツボの周り)にブヨブヨとしたゼラチンのような硬さや熱感、押された時に針で刺されたような鋭い痛みとして現れます。

頭部瘀血によるめまい
この場合のめまいはフワフワとした浮遊性のめまいが出ることが多いです。
というのも、頭部瘀血は「肝」が「実」している時に起こりやすく、この場合、「肝」の反対にあたる「脾」が「虚」すことにより、お腹から下半身が上半身と分離されているような感覚になることがあります。
また、頭部瘀血により頭が重くなるので、物理的に頭を支えるのが不安定になり、めまいになってしまいます。

頭部瘀血による頭痛
頭痛には大きく分けて2つ(頭周辺の筋肉の硬直による緊張性頭痛と頭周辺の血管が拡張して神経を圧迫して発症する偏頭痛)ありますが、頭部瘀血は両方の原因となってしまいます。
よく上記2つの頭痛の混合型のタイプの方もいらっしゃいますが、まさにこの頭部瘀血が原因となることが多いです。
頭部瘀血による不眠症
不眠の原因となることが多いのが、脳の温度が下がらないことです。
頭部瘀血は熱を持っているので、普段から頭が熱く、1日の中で一番疲労している寝る前が最も脳が熱くなってしまうため、不眠症になりやすい傾向があります。
慢性的な腰痛・坐骨神経痛や急性のぎっくり腰・肉離れ
慢性的な瘀血は腹筋の機能を低下させるので、骨盤を前傾(反り腰)させてしまうことで腰椎を圧迫させたり、周囲の筋肉を圧縮させる力が加わり、腰痛や坐骨神経痛の原因になります。
また、普段は腰が重いくらいの症状でも、ぎっくり腰を年に数回起こしてしまったり、スポーツをするとよく肉離れをしてしまう原因も慢性的な瘀血によるものであることもよくあります。
右首からの寝違えや慢性的な首の痛み、目の疲れ
前回紹介したように瘀血は右側の後頭部に出来やすいため、ここを中心に周りの筋肉を硬くさせて慢性的な首の痛みや眼精疲労、よく寝違えるなどの症状を引き起こします。
不妊症や不育症、腹痛や便秘・下痢などの消化器への影響
瘀血は身体の様々な箇所で発症しますが、最も大きく反応が出るのは腹部です。
これは全身の静脈から集めた血液を肝臓に運ぶための静脈である門脈があるためです。
しかし、肝臓の機能が低下してしまうと、門脈から運ばれた血液を肝臓で処理することができずに、停滞したり、逆流することで、各臓器にも瘀血ができてしまい、各疾患の原因となってしまいます。
不妊症や不育症
東洋医学では子宮は「肝」に属し、卵巣は「腎」に属するとされています。
これは東洋医学では西洋医学のように臓器そのものを示しているのでなく、はたらきや起源などでグルーピングしているためです(他にも「肝」に属するのは目、涙、靱帯、腱、爪、味覚の酸味などがあります)。
そのため、肝臓の機能と子宮の機能はリンクされるので、瘀血があると子宮内膜の状態を悪くさせたり、受精卵や胎児の発育にも悪影響を及ぼしてしまいます。
また、上記のめまいの欄にも書いてありますが、「肝」が実すると「脾」が虚すので、「脾虚」になると身体全体の粘膜のはたらきが鈍くなります。
例えば、喉の粘膜のはたらきが鈍くなり、容易に空気中のウイルスや細菌の侵入を許してしまい、風邪を引きやすくなるなどです。
子宮内膜にも同じ現象が起きて、子宮内膜の厚さが薄くなったり、子宮外妊娠や妊娠維持が困難になる原因にもなります。
腹痛や便秘・下痢などの消化器症状
瘀血は左下腹部に好発するので、その近くにある大腸のはたらきを鈍くさせ、その腹痛・結果便秘や下痢などを引き起こしやすくします。
まためまいや不妊症の欄にも書いてありますが、「肝」が実すると「脾」が虚すので、「脾虚」になると身体全体の粘膜のはたらきが鈍くなり、腸の蠕動運動に悪影響を及ぼし、これも原因となることがよくあります。
前回にも書きましたが、瘀血は長い年月でできるものなので、慢性痛や慢性症状の原因にもなります。
しかし、先程述べたように、古く毒性のあるものなので、施術をして一気に瘀血を流してしまうと、身体が瘀血の処理に間に合わず、身体中に瘀血が巡ってしまい、身体に悪影響(だるくて起きれなくなるなどの軽い症状から、蕁麻疹が出る、高熱が出るなどの重い症状など)を及ぼします。
瘀血の症状を取るのはとても根気が大事になってきます。
早く症状を良くしたいところではありますが、時間がかかってしまうこともよくあります。
ですが、施術を行なっていくと症状だけでなく再発の防止や、早期回復、ご自身でも自覚のなかった症状(そういえば最近お腹の調子が良い、朝の起き上がりが楽、なんだか身体が軽く感じるetc…)も期待できます。
また、普段の生活で気をつけることや、どんな食生活が良いかなども早期の回復の近道になるので、施術とともに行なっていくとより効果的なものとなります。