腸内環境と「脾(ひ)」との関係性

最近よく腸内環境という言葉を見たり聞いたりされることも多いことと思います。
腸内環境とは、ざっくりいうと腸内にある無数の善玉菌や悪玉菌による腸内での活動を意味しています。
腸内は特殊で、他の臓器とは違う点が一つあります。
それは腸内の悪者である悪玉菌が必ずいること、そしていて当たり前ということです。
この悪玉菌と善玉菌のバランスにより腸内環境が作られています。

東洋医学では腸内環境はどこに当てはまる?

東洋医学では「人の身体も自然のもの(木・火・土・金・水)でできている」という五行説(論)という考え方がベースにあります。
例えば、木に当たる人体の箇所は肝臓、火は心臓、土は消化器全般、金は肺、水は腎臓といったものが当てはまります。
これらは自然と同じように、木から火ができて、燃えカスが土になり、土から金(ここでは原子や分子、イオンなどと考えるとわかりやすいかもしれません)、金(原子や分子やイオン)から水ができる、というように、それぞれが単独で働いているのではなく、お互いがお互いを生み出して、人体を動かしていると考えられています。(これを相生関係といいます)。

また、ツボの経絡でも小腸経や大腸経という経絡があるのですが、東洋医学ではその経絡が現代で表す臓器にそのまま該当するのではなく、同じ働きをしているものを総称して表します(ここがちょっと難しいところではあります。。)
そして、腸内環境とは小腸や大腸だけでなく、盲腸(お腹の扁桃腺)などの免疫系や腸の前にある胃、消化酵素を小腸に送っている肝臓、膵臓との関係も強いため、消化器全般に当てはまり、腸内環境は「脾(ひ)」に該当します。

腸内細菌は元々土にいた?

上記で述べたように腸内環境は「脾」に属し、元を辿ると「土」にも属すということになります。
そしてちょっと驚きではありますが、腸内環境を作っている腸内細菌も元々は土の中にいる細菌なのです。
人類が土と関わるようになってから、土にいた細菌は人間の身体に入り、人間と共存しているということです。
共存ということは、身体の中に入ってきた細菌にも良いことがなくてはいけないし、入られた人間にも良いことがないといけない関係です。
その関係性によりできたのが、細菌には食べたものをエネルギーにして住みやすい環境でいること、そして人間には食べたものを分解し、吸収しやすい形にしてもらい、余剰分を排泄することでお互いが恩恵を受けるような関係でいるのが健康的な腸内環境といえます。
また腸内細菌は場所や環境で様々な種類があることから、どの環境で生まれ育ったのかによっても細菌やその割合も変わってきます。
もちろん、国によっても違い、時代によっても違い、もっと細分化された範囲でも違いがあるようです。
そのため、身体にあった腸内細菌は自分が生まれ育ったところで作られたものに多く含まれている可能性も高くなる、とも考えられます(日本人は古来から日本で作られていた食べ物などが該当します)。

「脾」のバランスを崩す原因

これは東洋医学でも西洋医学でも共通した原因があります。
それは「糖の過剰摂取」です。
西洋医学では、腸内の悪玉菌のエサになるのは糖としています。
また、腸内の悪玉菌と言われるものの中にはカビに近い「真菌」も存在しているので、糖を過剰に摂取すると腸内にカビが生えてしまい、腸内環境を悪化させることにもなります。
東洋医学でも五行説での中の「五味」といって、肝は酸味(すっぱい)、心は苦味、脾は甘味、肺は辛味、腎は鹹味(塩辛い)と表し、その味覚を取りすぎると、その臓のはたらきを鈍くさせるとされています。
このようにはたらきが鈍くなった状態を「虚(きょ)」といい、「脾」が「虚」したので「脾虚(ひきょ)」といいます。
こちらの記事にも「糖が身体に与える影響」をご紹介しておりますのでご覧ください↓



腸内環境を整える食べ物はいろいろ紹介されていますが、まずは糖を少なくする」ことを当院ではおすすめしています。
と言っても、糖は身体のエネルギー源となるので、取らなさ過ぎもよくありません。
適量なのは日々の食事で摂る3食分のお米の量で十分のようです。
それ以外は余剰になってしまいます。
また、パンや麺類なども主食になりますが、先ほど腸内細菌は土の中にいたとご紹介したように、元々その土地にあった細菌が分解しやすいものを摂るのが腸内環境を維持するのに必要なことです。
というのもお米などは腸内細菌にとっては分解しやすい食物になるので、消化するにも負担になりづらく、
パンや麺類などの小麦類は分解しにくい食物で、消化するのに時間がかかったり、その際にガスを発生することで、身体への負担が大きく、腸内環境を崩す原因になりやすいとも言われています。

腸内環境が崩れると出やすい反応点

以下の箇所に反応があると、腸内環境が崩れている可能性があります。

  • お腹、骨盤周りの冷え
    →腸内環境が崩れると体温が下がりやすくなり、特にお腹周りや骨盤周りなど皮膚の厚い箇所が冷えてきます。
  • 左胸椎10〜12番(背中の真ん中より少し下辺り)、左肋骨下、臍周囲の硬さ
    →これらは全て糖の過剰摂取による反応点です。左胸椎10〜12番、左肋骨下は糖を分解している膵臓の反応、
    臍周囲は副腎という腎臓の上にのっかているホルモンを分泌している器官です。
    この副腎からも糖に関係する(血糖値を上げたりするなど)ホルモンが分泌されているので、反応が出ます。
  • 首の前面、右下腹部の硬さ(普段からの痛みや、圧痛があるときもあります)
    →これらは扁桃腺の反応です。
    先ほども紹介したように、腸内の悪玉菌が糖をエサに増殖すると、右の下腹部(盲腸)に反応が出ます。
    また、それに伴い喉の扁桃腺の機能も低下するので、首の前面である喉の扁桃腺の反応も反応が出やすくなります。

腸内環境が崩れると出現する症状

  • 身体が冷えやすくなる
    →食べたものを消化するのに時間がかかってしまったり、消化不全となり、エネルギー源を体温に変えにくくなってしまうため、身体が冷えやすくなる。
  • アレルギー体質になる
    →腸内に悪玉菌が多くなることで、アレルギーに関係する免疫細胞の攻撃性が強くなり、無害なものも攻撃することでアレルギー反応が起こりやすくなる。
  • 疲れやすい
    →消化が不十分になり、エネルギー源が少なくなるので疲労も溜まりやすくなる。
    また、腸内で多くの免疫細胞が作られますが、腸内環境が崩れると免疫細胞(アレルギーに関するもの以外)のはたらきが鈍くなり、疲労が回復しにくくなる。
  • 内臓下垂
    →腸だけに限らず、全ての臓器が冷えたり、疲労したりすると正常な位置を保つことができなくなり、重力に負け、垂れ下がってきます。これを内臓が垂れ下がるということから「内臓下垂」といいます。
    特に腸は内臓下垂により、腹筋も使いにくくなるので、下垂を食い止めることができずに腸が前に垂れ下がってしまいます。これが俗にいう「ぽっこりお腹」です。
    また、腹筋が使いにくくなるため、腰回りや背中の筋肉に負担がかかりやすくなるため、慢性的な腰痛やぎっくり腰、酷くなるとヘルニアなどの重篤な疾患につながることもあります。

「脾」を良くするには?

先ほど述べたように、まずは余分な糖を取らないことから始めてみましょう。
いきなりそれまで摂っていた分をなくすのはなかなか難しいので、まずは半分にするとこからでも大丈夫です。
そこから慣れてきたらもう半分減らす、というように徐々に減らしていきます。
どうしても食べたくなってしまった時は、100%のはちみつやメープルシロップ(スプーン2杯分くらい)、ドライフルーツやさつまいもなどの芋類、果物ではりんごなどは、腸内細菌は分解しやすいと言われているので、それらで代用しましょう。
当院でよくおすすめしているのが焼きりんごです。
1/2から1/4にしたりんごを、オーブンやトースターなどで焼いて、ヨーグルトとはちみつやメープルシロップをかけます。
分解しやすい糖分なので、腸内環境にも良くおいしく食べられると思います。
また、腸内の温度を下げないように温かい飲食物を摂ることも腸内環境を整えるには重要です。
というのも、腸内の温度は40℃近く、そして善玉菌が活発になるのも同じ温度と言われています。
対して悪玉菌が好きな温度は30℃未満の低い温度。
実は冷え冷えの350mlビール1本を飲むと腸内の免疫の80%は停止してしまうとも言われています。
それだけ、腸内の細菌は温度に敏感なので、腸内が冷えないような飲食を心がけましょう。

当院の施術でも腸内環境を整えることができます

腸内環境を整えるには、「脾」を整えることとご紹介してきました。
そして「脾」のバランスを崩すのは「糖の過剰摂取」でしたよね。
ご自身で糖を減らすことは大前提ですが、施術により溜まった糖の分解を促進することもできます。
また、糖分以外にも「脾」のバランスを崩す要因もあるので、それも合わせて施術することができます。
そこまで身体に糖が溜まっていなければ、ご自身の節制だけでも症状はある程度変化していきます。
ですが、長年に渡り蓄積した糖がある場合は、症状の変化が出るまでに時間がかかることもあります。
そういった場合は、少しずつ摂る量を減らしながら、施術も受けて行くと、症状の変化、そして軽減までをより早くすることができます。
糖の過剰摂取にお心当たりがあり、頑張って症状を無くしたい!という方は是非当院にご相談ください。